
技人国で物流の管理職候補を採用するには、専門知識や語学力を使う仕事と、本人の学歴・職歴を照合します。「管理職候補」という肩書だけでは、技人国の対象になりません。この記事では、任せられる業務の考え方と、募集前に人事がそろえる資料を整理します。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国)は、専門的な技術・知識や外国の文化に基づく能力を使う仕事が対象です。配送や倉庫内作業を主な仕事にする採用には使えません。外国人ドライバーとの通訳や物流の改善業務を担う人と、運転を担う人の募集を分けて考えます。
配車計画や通訳は、専門性のある仕事内容なら技人国に該当しうる業務です。ただし、職種名の一覧だけで許可の可否は決まらず、実際の仕事と本人の経歴を具体的に説明する必要があります。
業務 | 専門業務として検討する例 | 区別する作業 |
|---|---|---|
配車計画 | 輸送量や運行実績を分析し、車両の割当てや配送経路の改善案を作ります。 | 決められた配車内容の転記だけでは、専門性の説明になりません。 |
運行管理の補助 | 運行記録を分析し、労務管理や安全教育の改善資料を作成します。 | 日報を集めるだけの仕事と分けます。 |
海外拠点との連絡 | 外国語を使い、輸送条件の調整や海外取引に関する交渉を行います。 | 定型メールを転送する仕事とは区別します。 |
通訳・翻訳 | 外国人ドライバーとの面談を通訳し、業務手順書を翻訳します。 | 配送を主に担当し、時々通訳する配置は別です。 |
採用支援 | 自社の海外人材の募集企画、面接通訳、雇用条件の翻訳を担当します。 | 応募情報の入力や書類整理だけの仕事と区別します。 |
配送・倉庫内作業・車両清掃 | これらを主な仕事とする採用は、技人国の対象になりません。 | 商品を取り出すピッキングや仕分けも含みます。 |
表の専門業務は、業務設計の例であり、入管庁が物流職種ごとの許可を示した一覧ではありません。人事は「何を分析するか」「誰との通訳がどれだけあるか」「何を作成するか」を書き出します。通訳する場面がほとんどないのに、求人票へ通訳と付け足しても実態の説明にはなりません。
運行管理者は、事業用自動車の運行の安全を確保するために選任される者です。選任には運行管理者資格者証が必要で、法令上の補助者(運行管理者の業務を補助する者)にも基礎講習の修了などの要件があります。技人国の許可だけで、運行管理者や法令上の補助者になれるわけではありません。分析資料の作成と、資格・選任を要する業務を分けて配属を決めます。
技術・人文知識の業務と、通訳などの国際業務では、学歴・実務経験の基準が異なります。学歴・実務経験に加えて、日本人が同じ業務に従事する場合と同等額以上の報酬も必要です。
区分 | 主な基準 | 照合に使う資料 |
|---|---|---|
技術・人文知識を学歴で満たす場合 | 業務に関連する科目を専攻して大学を卒業するなどの要件を満たします。日本の専門学校で所定の課程を修了することも選択肢です。 | 卒業証明書、成績証明書などで専攻と業務の関係を確認します。専門学校の場合は、専門士・高度専門士(所定の課程を修了した人に付与される称号)なども確認します。 |
技術・人文知識を職歴で満たす場合 | 関連する業務の実務経験が10年以上必要です。所定の学校で関連科目を専攻した期間も含みます。 | 履歴書と在職証明書などで、仕事内容と従事期間を照合します。 |
国際業務の場合 | 通訳・翻訳・海外取引などに関連する実務経験が原則3年以上必要です。 | 過去の勤務先で行った業務と期間を証明する資料を用意します。 |
表は主な確認項目で、学校・課程や業務による特例は別に確認します。大学卒業者が通訳・翻訳・語学指導を行う場合は、国際業務の実務経験要件は不要です。
「物流会社で10年勤務」と「採用後の専門業務に関連する経験が10年ある」は同じではありません。運転経験だけを配車分析の経験として扱わず、在職証明書に担当業務と期間を記載してもらいます。学歴で確認する場合も、卒業証明書の学校名だけで済ませず、履修内容と予定業務を並べます。
2026年4月15日以降の申請では、企業等の提出書類区分であるカテゴリー3・4に追加書類が必要です。1つは、所属機関の代表者に関する申告書(入管庁の参考様式)です。もう1つは言語能力の資料で、主に言語能力を使って通訳などの対人業務に従事する場合に、業務で使う言語の能力を証明します。基準は、言語能力の共通指標であるCEFRのB2相当です。
日本語能力試験(JLPT)のN2以上は、日本語能力を証明する方法の1つです。人事は自社のカテゴリーと申請の種類を入管庁の一覧で確かめ、必要な証明資料を本人から集めます。転職や業務変更後の更新で提出が必要になる場合もあるため、採用時の書類をそのまま使えるとは限りません。
募集前には、求人票と実際の配属が一致するよう、主業務・成果物・担当範囲を決めます。入社後も、配送の欠員補充や倉庫作業が中心になっていないか、勤務実態との照合が必要です。
埼玉県の運送会社(従業員100名以上)では、技人国で管理職候補を採用しました。外国人ドライバーとの橋渡し役を担い、外国人の役職者が誕生しています。同じ役割を自社で設ける際も、任せる仕事と候補者の経歴の照合が必要です。
技人国には、特定技能1号の原則通算5年という在留期間の上限がありません。在留期間は5年・3年・1年・3か月のいずれかで、更新許可を受けながら長く働けます。採用時点で長期の在留が約束されるものではなく、会社は在留期限と仕事内容を継続して管理します。
技人国で働く社員を運転担当に変える場合、日本の免許を取るだけでは足りません。特定技能でドライバーにするには、在留資格の変更許可が必要です。特定技能1号「自動車運送業分野」は、一定の技能を持つ外国人を運送業務に受け入れる資格です。本人と企業の要件は、自動車運送業分野の特定技能と技人国の違いで確認できます。
技人国の募集は、専門業務の一覧と候補者の証明資料をそろえて検討します。配送や倉庫作業の欠員は、別の採用計画として扱います。
採用前には、現場作業の割合、大卒者の業務、在留期間の意味を区別します。いずれも職種名や勤続年数だけでは判断できません。
将来の昇進予定だけでは、倉庫作業中心の配置を技人国の業務として説明できません。入社当初に実務研修を行う場合は、内容・期間・必要性と、その後に担当する専門業務を示し、個別に確認します。作業員の採用方法は、倉庫内作業に使える在留資格で整理しています。
任せられません。技術・人文知識の業務では、専攻との関連を確認します。通訳などでも、実際に専門業務があることが前提です。大卒者の通訳等の実務経験免除と、配送・倉庫作業の可否は別の話です。
技人国に合う専門業務があり、本人が学歴・職歴などの要件を満たしていれば申請できます。勤続年数だけで変更できる制度ではありません。運転を続ける場合の期間管理は、特定技能1号の通算5年の考え方で確認できます。