
特定技能は、人手不足の分野で外国人が働くための在留資格です。1号と2号があり、自動車運送業分野で利用できるのは1号のみです。この記事では、担当できる仕事、本人と企業の要件、在留期間を整理します。採用の検討では、任せる業務に合う区分と、本人・企業双方の要件を確認します。
社内で検討する際は、予定車両、雇用条件、自社の認証状況を用意すると、制度の要件と見比べられます。以下は2026年9月9日時点で確認した内容です。
自動車運送業分野は、2024年3月の閣議決定で特定技能制度に追加されました。生産性向上や国内人材の確保に取り組んでも、人材確保が難しい状況を受けたものです。対象業務はトラック・タクシー・バスの3区分に分かれます。
自動車運送業分野特定技能1号評価試験は、2024年12月に始まりました。受け入れ企業などが参加する自動車運送業分野特定技能協議会は、2025年1月17日に加入受付を開始しています。
本人には、担当する区分の評価試験合格と、日本語・日本の運転免許の要件充足が必要です。タクシー・バスでは、乗客を運ぶための第二種運転免許に加え、新任運転者研修の修了も求められます。
業務区分と主な仕事 | 日本語の基準 | 日本の免許・研修 |
|---|---|---|
トラック:運行と荷役です。 | 日本語能力試験N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT‑Basic)で下記の判定が必要です。 | 予定車両を運転できる第一種運転免許が必要です。 |
タクシー:運行業務・接遇業務を行います。 | N3以上が基本です。条件付きでN4水準も認められます。 | 第二種運転免許と新任運転者研修の修了が必要です。 |
バス:運行業務・接遇業務を担当します。 | N3以上が基本です。条件付きでN4水準も認められます。 | 第二種運転免許と新任運転者研修の修了が必要です。 |
タクシー・バスはN3以上(B1相当)が基本ですが、A2.2相当(N4水準)でも条件付きで認められます。受け入れ企業はB1相当以上の修得に向けた日本語学習プランを作成します。受け入れ企業に雇用され、乗客対応の指導を受けた補助要員が同乗し、乗客や関係機関との意思疎通を補助する必要があります。バスは離島・半島振興対策実施地域に限り、自治体との共生の取組の文書と緊急時連絡のICT環境を整えれば、補助要員の同乗は不要です。貸切バスはこの条件付き受け入れの対象外です。
JFT‑BasicではA2.2(A2)の判定、つまり総合得点200点以上が必要です。A2.1(175〜199点)は使えません。判定結果通知書で確認します。トラックの免許区分は、普通・準中型・中型・大型のうち予定車両に必要な区分で判断します。
トラックの荷役とは、荷物の積み込みや荷下ろしなどの作業です。これに加え、その会社の日本人ドライバーが通常行う関連業務には、付随的に従事できます。タクシー・バスも同じ考え方で、その会社の日本人ドライバーが通常行う業務(車両の清掃、運行前後の準備など)が基準です。
ただし、清掃などの関連業務だけを担当させることは認められません。人事と運行管理者で日本人ドライバーの作業一覧を作り、運行・荷役・接遇と付随業務を区別しておきます。採用後に任せる仕事は、この一覧を使って雇用契約の内容と突き合わせます。
特定技能1号の在留期間は、他分野での期間も含めて通算5年までです。運送会社に転職した日から、新たに5年が始まるわけではありません。帰国を挟んで自動車運送業分野へ移る場合も通算されます。準備用の特定活動の期間は通算5年に算入しません。
例えば、他分野の特定技能1号で2年在留した人なら、通常の通算上限までの残りは3年です。現在の在留カードだけでなく、過去の在留履歴も本人に確認する必要があります。人事は残りの期間を採用計画に反映します。
自動車運送業分野への特定技能2号・育成就労の追加は、現時点では未定です。2号への移行を前提に、5年を超える配置計画を確定することは避けます。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、専門知識などを使う業務を対象とし、略して技人国と呼ばれます。技人国のまま、ドライバーとして運転業務に就かせられません。運送会社では、管理職候補の専門的な事務業務や通訳など、資格に合う仕事内容を検討します。専門業務に付随する軽微な運転でも、主たる業務が運転になる配置は認められず、個別の可否は在留資格の範囲で判断します。
「管理職候補」という肩書だけで、技人国の対象になるわけではありません。本人の学歴・職歴などの要件と、実際に担当する業務が資格に合うか判断する必要があります。既存の技人国社員をドライバーに配置する場合も、日本の免許を取らせるだけでは足りず、適切な在留資格への変更が必要です。
候補者は、海外在住者と国内在住者の両方から募集できます。選定時に比べるのは、日本の免許の有無、評価試験・日本語の状況、特定技能1号での在留履歴です。
採用ルート | 募集対象・経路 | 人事が把握する事項 |
|---|---|---|
海外在住者を採用します。 | 現地ネットワークや送り出し機関を通じて候補者を探します。 | 試験の合格状況、保有免許、入国後の免許取得の必要性を把握します。 |
国内在住者を採用します。 | 国内ネットワークなどで、留学生や他資格からの変更希望者を探します。 | 現在の在留資格、必要な変更手続き、免許区分、通算在留期間を把握します。 |
海外から入国して免許取得などを行うために、特定活動(特定自動車運送業準備)という在留資格があります。在留期間はトラックが最長6か月、タクシー・バスが最長1年で、更新はできません。これは準備活動の上限期間で、採用全体の所要期間ではありません。
日本の免許を取得しても、準備用の特定活動では運送業務を担当できません。配送などへの配置は、特定技能1号への変更許可後です。運送業務に当たらない研修・教育としての公道走行とは区別します。
受け入れ企業は、自動車運送事業を経営し、協議会へ加入する必要があります。職場環境を評価する「運転者職場環境良好度認証制度(働きやすい職場認証制度)」の認証も要件です。トラックでは、代わりにGマーク制度で認定された安全性優良事業所を有することでも満たせます。認証の要件の詳細は国土交通省の案内で確認します。
労働時間・賃金は日本人と同様の条件とし、報酬は同等の業務を行う日本人と同等以上に設定します。人事は給与規程と勤務体系を確認し、雇用契約書に反映します。
企業には、生活・就労を支える法定支援の体制と支援計画も必要です。企業から委託を受けて支援を行う登録支援機関を利用する場合、支援範囲は契約内容によって異なります。委託先も、この分野の協議会への加入が必要です。法定支援に漏れがないよう、自社と委託先の担当を決めます。
申請から稼働までの担当と順序は、外国人ドライバー採用の流れで整理しています。
自社での採用を検討する際は、まず予定車両・認証状況・給与条件を1枚にまとめます。候補者が決まったら、試験結果、免許、在留履歴が要件を満たすか確認します。
採用の流れは外国人ドライバー採用の流れで確認できます。
国内採用でも、予定する仕事が在留資格の範囲に収まるか、確認が必要です。
他分野の特定技能1号で在留した期間も通算されます。転職や帰国で5年の計算はリセットされないため、残りの期間を確認して雇用計画を立てます。
人手不足を理由に、技人国の社員を配送ドライバーとして配置できません。担当業務を変更する前に、実際の仕事内容と在留資格の範囲を照合する必要があります。
国際運転免許証だけでは、特定技能外国人として運転業務に従事できません。予定車両に必要な日本の運転免許と、特定技能の在留資格などの要件を満たす必要があります。