
外国人ドライバーの免許取得費用は、会社負担と本人負担の設計が可能です。なお、国土交通省は免許取得費用は所属機関(受け入れ企業)が負担することが望ましいとしています。これは推奨であり、会社負担を義務付けるものではありません。負担方法の違いと、退職時の返還条件、日本人向け制度とのそろえ方を整理します。
対象は、一定の技能を持つ外国人が運送の仕事に就く在留資格、特定技能1号「自動車運送業分野」で採用する会社です。会社として決めるのは、会社が出す費用の範囲と、追加費用の承認方法です。本人負担を選ぶ場合は、採用時の説明まで決めておく必要があります。
会社負担なら、教習費を採用・教育の予算に組み込みます。本人負担なら、支払額や支払時期を本人が理解し、事前に了承していることが必要です。
負担方法 | 会社が決めること | 決裁前の確認点 |
|---|---|---|
会社が全額負担 | 対象の教習・検定・手数料を定めます。 | 教習費と追加費用を会社の支出として予算化します。 |
会社と本人で分担 | 費目ごとの負担者や補助の上限を定めます。 | 本人負担分と、追加費用が出た場合の扱いを事前に説明します。 |
本人が負担 | 対象費用、支払先、支払時期を示します。 | 本人の事前了承に加え、日本人向けの支援制度との整合を確認します。 |
これは社内で比較するための整理例です。会社が先に教習所へ払っても、後で本人に返してもらうなら、最終的には本人負担です。「会社が支払う」という説明だけで済ませず、返済の有無まで明示します。
見積もり依頼では、公表料金の対象免許・時期・助成の有無を確認します。例えば北海道深川市の332,960円は、普通免許のオートマチック車、4〜10月、市の助成適用前の教習料金です。大型・中型の取得費や、外国免許を日本の免許へ切り替える「外免切替」の総費用には流用できません。
総務は、本人の所持免許と配属車両を教習所に伝えて見積もりを取ります。基本料金に含まれる教習・検定と、追加教習・再検定・交通・宿泊の費用を分けると、会社の負担範囲を決めやすくなります。教習料金以外にも免許証交付手数料などの法定費用があるため、見積もりに含まれるか確認が必要です。免許の取得方法は外国人ドライバーの免許取得ルートで確認できます。
退職を理由に教習費の返還を求める条件は、労働基準法上問題になる場合があります。ここでは、退職と返済を連動させず、退職時の回収を前提にしない運用を勧めます。
労働基準法第16条は、労働契約を守らなかった場合の違約金や、損害賠償額をあらかじめ定める契約を禁止しています。例えば「一定期間内に辞めたら会社負担の教習費を全額返す」という条件は、この規定との関係が問題になります。本人の署名があれば済む話ではありません。
厚生労働省の資格取得費用に関するQ&Aも、返還条件の判断には実態の確認が必要だと説明しています。会社の業務命令による取得か、会社の必要経費か、独立した貸付(本人にお金を貸す契約)か、返済方法はどうかを総合して判断します。免許が退職後も本人に残る資格である点も、契約内容と併せて専門家に示す判断材料です。独立した貸付で、一定期間の勤務によって返還を免除する制度は、第16条だけを見れば違反にならない場合もあります。ただし特定技能では、労働基準法とは別に入管の基準があり、一定期間の勤務を条件に免許取得費用の返済を免除する契約や、返済途中で退職したら残額を一括返済させる契約は、受け入れができなくなるおそれがある例として運用要領に挙げられています。日本人向けの貸付制度をそのまま当てはめず、この点を先に確認します。貸付と名付けるだけでは足りず、契約内容と実態の確認が必要です。
貸付では、会社が出す費用に本人の返済義務が生じます。採用のために貸付を検討する場合は、総務が対象費用・貸付額・返済日程を整理します。退職を返済のきっかけにする条項を入れず、本人へ提示する前に弁護士などへ契約内容の確認を依頼します。
労働基準法第17条は、働くことを条件にした前貸し金を賃金と相殺することを禁止しています。相殺とは、支払う給与から借金分を差し引く扱いです。第24条は賃金の全額払いを原則とし、ただし書きで法令や書面の労使協定による一部控除を認めています。労使協定とは、会社と労働者の過半数で組織する労働組合、または過半数代表者との協定です。協定があっても第17条の禁止は別に確認し、給与から独断で回収する運用にはしません。
通常の教習費に加え、追加教習をどこまで認めるかは社内で先に決めておきます。教習を中止した場合の教習所からの返金条件と、本人への返還請求は別の問題として扱います。
日本人向けの免許支援制度がある会社では、外国人にも同じ基準で適用します。労働基準法第3条は、国籍を理由とする労働条件の差別的な取扱いを禁止しています。
例えば、日本人の大型免許取得を会社が補助しているなら、外国人だけを補助対象から外す扱いにはしません。一方で、勤続を条件にした返済免除など入管の基準に触れる仕組みを外国人に適用しないことは、運用要領上、差別的な取扱いには当たりません。総務は就業規則と免許取得支援規程を読み、対象の免許、補助範囲、申請条件を照合します。費用額が違う場合も、所持免許や教習内容による違いと、国籍による区別を混同しないことが必要です。
国交省Q&AのQ27では、本人負担の場合は、本人が十分理解できる言語で説明し、事前に了承を得る必要があります。日本語の規程を渡すだけで終えず、本人負担額、支払時期、追加費用が生じる条件まで伝えます。
この4段階は、社内で説明漏れを防ぐための運用例です。見積書、負担の説明書、了承の記録を同じ案件で保管すれば、支払先や負担額を後から照合できます。採用費全体の予算は外国人ドライバーの採用費用で整理しています。
決裁時にそろえる資料は、教習所の見積書、日本人向けの免許支援規程、本人への負担説明書です。ドラビザが支援したトラック運転者の免許取得事例では、教習所での取得費は30〜50万円程度が目安ですが、所持免許や取得する免許の種類に応じて個別に見積もります。
教習費の負担では、本人の了承と追加費用の扱いが判断点です。費目ごとに、誰がいつ説明し、了承を記録するかを決めます。
本人負担の設計は可能ですが、事前に十分理解できる言語で説明する必要があります。日本人向け制度との整合や、業務命令による取得の実態も確認します。同意だけで、すべての条件が認められるわけではありません。
回収の可否は、上の「退職と返済を連動させない理由」で示した契約内容と実態によって判断します。既存の貸付がある場合も、契約書と取得の経緯を弁護士などに示して個別に確認が必要です。
費目ごとに分担する設計は可能です。ただし、日本人と同じ基準で、再検定費の金額や発生条件を事前に説明して了承を得ます。会社の指示による教習の実態も踏まえ、不合格後に突然本人負担へ切り替える運用にはしません。