
外国人を初めて受け入れる会社は、指導する人、相談先、初日までの準備を決めます。受け入れ体制は、8割を今までどおりにし、残り2割を外国人向けに調整すると考えると整理しやすくなります。この記事では、業種を問わず見直せる5項目と、担当・期限を決めるための準備表を示します。
この考え方は、日本・東京商工会議所が2020年2月に発行した「外国人材活躍解説BOOK」第5章「受入れ態勢編」に基づきます。8割・2割は作業量を測った統計ではなく、今ある仕組みを生かして一部を調整するための目安です。例えば、新人教育の流れや安全の基準はそのままにし、説明の言葉、相談先、理解の確かめ方を変えます。以下の職場例と準備表は、その考え方を具体化した運用例です。
人事はまず配属予定の職場で、質問相手と教え方、身につく技能を説明できるか確かめます。同書も、職場で孤立する、教え方が従来のまま、仕事の面白みを感じにくい、という3つの課題を挙げています。
例えば、新人向けの手順書があればそのまま使い、社内だけで通じる略語には説明を足します。質問を受ける人が決まっていなければ氏名を載せます。品質や安全の基準は下げず、その基準に届くまでの教え方を変えるということです。
見直すのは、社員への説明、指導役の人選、身につく技能の提示、孤立を防ぐ仕組み、双方への研修です。外国人社員の努力だけに任せず、会社が説明や相談の機会を用意します。
受け入れを決めた段階で、人事が採用の経緯、任せる業務、指導役、困ったときの相談先をまとめます。朝礼や会議などの場で会社として全社員に伝え、欠席者にも同じ説明を届けます。「採用します」という通知だけで終わらせず、誰が何を教えるかまで共有します。
配属先から「説明の時間が取れない」という声が出たら、会社として指導時間と通常業務の配分を調整します。指導役を任命する際には、教える業務の範囲と、不在時に引き継ぐ人も決めておきます。
上司や日々の指導役は、文化の違いを理解しようとするか、差別的な見方をしないか、相手に合わせて説明できるかの3点で選びます。直属の上司と日々の指導役が別の人になる場合も、両者について確かめます。語学力だけでは選びません。
人事は候補となる指導役に、初日の作業を未経験者へ説明するつもりで話してもらいます。手順と理由を分けて話せるか、聞き返されても別の言葉で伝えられるかが確認点です。国籍から性格や能力を決めつける発言があれば、本人の経験を聞いて判断する指導へ改めます。
「将来の役に立つ」だけでは、何を目指せばよいか伝わりません。例えば、最初に覚える作業、覚えたかを確かめる方法、覚えた後に任せる業務を教育計画に記載します。会社が実際に用意できる教育内容や評価基準を示し、未確定の昇給や昇進を約束する説明は避けます。
在留資格「特定技能」(一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れる制度)では、同一分野での転職が可能です。業務区分などの条件や必要な手続きはあるものの、本人は職場を移れます。だからこそ、技能が身につく道筋を示し、採用後も働き続けたいと思える仕事と職場をつくる必要があります。手続きの詳細は特定技能の転職手続きに整理しています。
同書は、同国籍の複数採用や、同国籍の先輩を相談役にする方法を挙げています。相談役となる先輩をメンターと呼びます。同国籍の人がいることは、受け入れの条件ではありません。採用人数や本人の希望に合うときに選べる方法です。
1名の採用でも、人事が相談相手と不在時の連絡先を決められます。指導役が終業前に声をかける、定期的に話す時間を設けるなど、本人から切り出さなくても相談できる運用を組みます。仕事以外では昼食や社内行事などに誘い、参加するかは本人が選べる形にします。
特定技能1号では、法令で定める定期面談を、本人とその上司等に3か月に1回以上行う必要があります。面談するのは支援を統括する支援責任者等で、日常の声かけとは別です。予定された面談日まで困りごとを待たせず、その都度相談を受けます。
研修では、日本人の指導役が教え方を身につける場と、外国人社員が自社の働き方を知る場の両方を用意します。日本人側は、文化や経験の違いを確かめる姿勢と、やさしい日本語での説明を学びます。やさしい日本語は、難しい言葉や長い文を、相手に伝わる表現に整えた日本語です。
出入国在留管理庁・文化庁の「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」は、情報の整理や短い文への書き換えを示しています。職場では、入社案内から社内の略語を外し、1文で伝える内容を絞る練習に使えます。雇用条件などを十分に理解してもらう場面では、本人に応じて翻訳や通訳も用意します。
外国人社員向けには、始業時刻、遅刻・欠勤時の連絡方法、作業を中断して相談する場面を教えます。「日本では常識」と省略せず、自社で必要な手順と理由を説明する研修です。例えば、欠勤時の連絡相手と連絡手段を本人に答えてもらえば、説明の不足に気づけます。
人事は、次の表をもとに自社の担当者名と実施予定日、完了日を記録します。期限は社内運用の設定例で、在留資格申請などの法定手続きの期限を示すものではありません。兼務してもかまいませんが、各項目を誰が終えるかは明記します。
準備すること | 担当と作業 | 期限と完了条件の例 |
|---|---|---|
社員への説明 | 人事が採用理由、業務、相談先を全社員へ伝えます。 | 配属前までに説明し、欠席者への共有も終えます。 |
指導役の選定 | 会社として3条件を確かめ、主担当と代役を決めます。 | 初日の教育予定を組む前に、両者の担当時間を確保します。 |
学ぶ内容の整理 | 指導役が最初の作業と習得の確認方法を書き出します。 | 初出勤前までに、手順を説明できる資料を用意します。 |
相談先の案内 | 人事が氏名、連絡手段、対応時間を本人に伝えます。 | 初日に本人が連絡先を見つけ、使い方を示せるか確認します。 |
双方への研修 | 人事が指導役向けの研修と、本人向けの説明を手配します。 | 指導役は配属前、本人は作業開始前に必要な内容を学びます。 |
本人が直属の上司に言いにくい悩みを話せるよう、人事などへの別の相談経路も設けます。初日の説明を終えたかは、資料を渡したことに加え、本人が相談先や手順を説明できるかで確かめます。本人が説明できなかった項目は、教え直す担当者と日を記録します。
ここまでは業種を問わない内容です。運送業での具体的な準備は受け入れ前チェックリスト、入社後の運用は入社後90日の定着支援で確認できます。
最初の一歩は、配属予定の職場で指導役とその代役を決めることです。続けて相談先と初日の教育予定を準備表に書き込み、次の点を見直します。
担当の兼務や採用人数に応じて、準備表は調整できます。特定技能1号の法定支援は、日常の教育とは分けて管理します。
指導役の選定や手順書の見直しは進められます。本人の理解できる言語を確かめ、必要な翻訳・通訳の手配先も決めます。特定技能1号の相談・苦情対応では、本人が十分に理解できる言語での対応が必要です。
複数採用は孤立を防ぐ方法の1つです。1名なら、相談役と定期的に話せる時間を用意し、本人が相談しやすい相手かを配属後にも確かめます。
実際の仕事を教える社内の担当は必要です。特定技能外国人の支援を受託する登録支援機関の支援範囲は、契約内容によって異なります。会社で教える業務と委託する支援を分け、担当の空白をなくします。