
タクシー・バスの特定技能採用では、日本語能力試験N3以上を基本に、第二種運転免許と新任運転者研修の修了が必要です。この記事では、トラックとの要件の違いと、人事が募集前に決める事項を整理します。
対象は、一定の技能を持つ外国人が運送の仕事に就くための在留資格、特定技能1号「自動車運送業分野」です。新任運転者研修は旅客事業者が新たに雇い入れた運転者に行う法定の研修で、特定技能では移行前の修了が条件です。
本人に求める免許・日本語と、企業に求める認証が異なります。タクシー・バスでは、入国後に免許取得や研修を行う準備用の在留資格を最長1年使えます。
第二種運転免許は、タクシーやバスで乗客を運ぶ業務に必要な免許です。B1・A2.2は日本語能力の段階を示す「日本語教育の参照枠」の区分です。この分野の制度概要では、日本語能力試験のN4と、別の試験である国際交流基金日本語基礎テスト(JFT‑Basic)のA2.2判定を、参照枠上の水準で対応づけています。以下、A2.2相当(N4水準)と表記します。比較表の日本語欄は、試験で能力を証明する場合の要件です。
項目 | タクシー・バス | トラック |
|---|---|---|
日本語 | 基本要件と条件付きの受け入れは次節で説明します。 | N4以上、またはJFT‑BasicでA2.2相当(N4水準)以上の判定が必要です。 |
日本の運転免許 | 予定車両に合う第二種免許が必要です。 | 予定車両に合う第一種免許が必要です。 |
評価試験 | タクシーまたはバスの区分に合格します。 | トラック区分に合格します。 |
研修修了要件 | 特定技能への移行前に新任運転者研修を修了します。 | 旅客向けの研修修了要件はありません。業務上必要な教育は行います。 |
準備の在留期間 | 最長1年で、更新できません。 | 最長6か月で、更新できません。 |
企業の認証 | 働きやすい職場認証が必要です。 | 働きやすい職場認証、またはGマーク(安全性優良事業所の認定)を受けた事業所の保有が必要です。 |
評価試験の正式名称は「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」です。運行や乗客への応対など、業務に必要な知識を確かめます。人事は合格証明書の区分が配属先と一致するか照合します。受験の手続きは特定技能ドライバーの評価試験にまとめています。
職場環境を評価する制度の正式名称は「運転者職場環境良好度認証制度(働きやすい職場認証制度)」です。Gマークは、全日本トラック協会が安全性優良事業所を認定する制度です。タクシー・バスの受け入れには、働きやすい職場認証の取得が必要です。
企業は認証に加え、受け入れ企業などで構成する自動車運送業分野特定技能協議会に加入します。加入は準備用を含む在留資格申請までに必要です。事業・雇用条件・生活や就労上の法定支援など、共通の要件は特定技能ドライバーの受け入れ要件で確認できます。
N3以上(B1相当)が基本ですが、A2.2相当(N4水準)でも受け入れる道があります。A2.2相当(N4水準)での受け入れには、企業による日本語学習プランと補助要員の同乗などの措置が必要です。本人の合格証だけで採用条件を満たすわけではありません。
分野別運用方針の別紙10では、企業がB1相当以上の修得に向けた学習プランを作成することを求めています。同乗する補助要員は受け入れ企業に雇用され、乗客対応の指導を受けた人です。乗客や関係機関との意思疎通を補助する役割を担います。
人事と運行管理者は、A2.2相当(N4水準)の候補者を募集対象にする前に、補助要員を同乗させる勤務体制を検討します。社内計画の例として、学習担当者、学習時間、同乗担当者と代替要員を記載します。電話で必要時だけ通訳につなぐ運用を、同乗の代わりとは扱えません。
一般貸切旅客自動車運送事業、つまり貸切バスは、このA2.2相当(N4水準)での受け入れの対象外です。貸切バスではB1相当以上が必要です。乗合・貸切の両方を営む企業は、候補者をどちらへ配属するのか先に決める必要があります。
貸切を除くバスには、運用方針で定める離島や半島振興対策実施地域で、同乗に代える措置もあります。企業は自治体から、地域との共生に向けて協力して行う取組を記した文書を受領します。さらに事故などの緊急時に連絡・対応できる通信技術等の環境整備が必要で、日本語学習プランも省略できません。
単に離島・半島に営業所があるだけで対象と判断せず、運転を行う地域と措置の内容を照合します。日本語試験の判定や確認書類の読み方は、特定技能ドライバーの日本語要件で整理しています。
入国後に免許や研修を進める在留資格は「特定活動(特定自動車運送業準備)」です。タクシー・バスでは最長1年ですが、免許取得と研修修了後は速やかに特定技能への変更を申請します。1年は取得にかかる標準期間ではなく、準備用の在留期間の上限です。
この在留資格で入国する前に、日本語・評価試験への合格などの要件を満たす必要があります。入国後に残すのは、免許取得や新任運転者研修の工程です。
国土交通省Q&AのQ28では、第二種免許の受験資格に必要な運転経歴は海外分でも認められています。海外経験者を、日本で運転経歴を一から積む候補者と同じ扱いにする必要はありません。本人の免許と経歴を人事が集め、必要書類や受験資格を免許窓口に確認します。
海外の免許があっても、日本の第二種免許の取得は必要です。外国免許を日本の免許に切り替える外免切替と、その後の第二種免許の取得を分けて計画します。免許取得の方法は外国人ドライバーの免許取得ルートで確認できます。
新任運転者研修の根拠は旅客自動車運送事業運輸規則第38条・第39条です。企業は法令・接遇(乗客への応対)・地理・安全の座学、路上走行研修を組み込みます。運転の特性や注意点を把握する適性診断も必要です。
新任運転者研修の修了は業界団体が定めた効果測定の基準で判定されます(国交省Q&A)。確認先は所属する業界団体か研修の委託先です。
次の表は社内の工程管理例です。人事が教習所と研修担当者から日程を集め、免許取得日と研修修了日を別々に管理します。
工程 | 担当と作業 | 次へ進む判断基準 |
|---|---|---|
免許取得 | 本人が教習・受験を進め、人事が予約状況を把握します。 | 必要な第二種免許を取得します。 |
研修 | 企業の研修担当者が座学・路上走行研修と適性診断を手配します。 | 効果測定基準に沿って修了を判定します。 |
変更申請 | 本人と企業が書類をそろえ、行政書士に依頼する場合はその行政書士と申請を進めます。 | 免許取得・研修修了などの要件を満たしたら速やかに申請します。 |
乗客を運ぶ営業運転の開始は、特定技能への変更許可後です。人事は入国日と乗務開始予定日を分けて社内に共有します。期限内の変更申請と審査中の扱いは、特定活動による準備期間で整理しています。
採用判断では、旅客向けの認証と研修体制を先に確認します。社内の検討資料には、次の4点について現在の状況と未完了の準備を記載します。
貸切バスへの配属と、免許・研修がそろう時点は、採用日程を左右します。募集時と乗務開始前に次の点を確認します。
A2.2相当(N4水準)での条件付き受け入れは貸切バスに適用されません。補助要員を同乗させても代替できません。B1相当以上が必要で、日本語能力試験ならN3以上が該当します。
免許だけでは特定技能への移行要件を満たしません。新任運転者研修の修了も必要で、企業は座学・路上走行研修・適性診断の実施と修了を確認します。
取得できなかったことを理由に、最長1年の特定活動は更新できません。教習・受験の進捗を把握し、研修と在留資格変更の申請も含めて期限を管理します。