
特定技能の雇用契約書には、給与や勤務時間に加え、一時帰国の休暇や帰国旅費の扱いも定めます。雇用条件書と給与の根拠資料をそろえ、本人が内容を理解した上で署名する必要があります。契約に入れる項目と、人事が署名前に照合する書類を整理します。
対象は、特定技能1号「自動車運送業分野」で外国人を採用する運送会社です。特定技能1号は、一定の専門性・技能を持つ外国人が働くための在留資格です。本人の試験・免許や企業の認証は、特定技能ドライバーの受け入れ要件で確認できます。
入管庁の参考様式を使う場合は、「特定技能雇用契約書」と「雇用条件書」を一緒に用意します。前者は契約の合意を、後者は給与・勤務場所などの具体的な条件を示す書類です。
様式番号は、契約書が参考様式第1‑5号、雇用条件書が参考様式第1‑6号です。雇用条件書には別紙「賃金の支払」も含まれます。記入前に入管庁の申請・届出様式一覧を確認し、古い保存ファイルをそのまま流用しない運用にします。人事は求人票、面接で提示した条件、社内の就業規則を手元に置きます。
記載項目 | 具体的に示す内容 | 照合する資料 |
|---|---|---|
契約期間・更新 | 期間の定めの有無、開始・終了日、更新の有無と判断基準、更新上限を書きます。 | 採用条件と契約更新のルールです。 |
勤務場所・業務 | 雇入れ直後の営業所・仕事内容と、それぞれの変更の範囲を記載します。 | 配属予定と担当業務の一覧です。 |
勤務時間 | 始業・終業、休憩、契約で定める所定労働時間、残業の有無、交替勤務の扱いを示します。 | 勤務表と就業規則です。 |
休日・休暇 | 休日、年次有給休暇、その他の休暇と一時帰国の扱いを定めます。 | 年間の勤務予定と休暇規程です。 |
賃金 | 基本給、手当、割増賃金、計算・支払方法、締切日・支払日、昇給を示します。 | 給与の計算ルールと比較資料です。 |
退職・その他 | 退職や解雇の事由、帰国旅費、健康・生活状況の把握に必要な措置を定めます。 | 退職規程と支援の実施方法です。 |
本人負担・控除 | 社宅費などの負担内容と、給与から差し引く名目・額を明記します。 | 住居の契約、費用明細、控除の根拠です。 |
表は主な項目です。退職金、賞与、食費・作業用品の本人負担、安全衛生、職業訓練などに定めがあれば、それらも明示します。期間を定めて雇う場合は、昇給・退職手当・賞与の有無と、雇用管理の相談窓口も必要です。
2024年4月からは、勤務場所と業務の「変更の範囲」も明示事項に加わっています。例えば営業所間の異動を予定するなら、その対象範囲を書きます。契約書に広く書いても、在留資格で認められない仕事を任せられるわけではありません。
特定技能では、労働関係法令に加えて入管の契約基準も満たす必要があります。基準を定める省令は「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」です。
報酬は同じ業務の日本人と同等以上に設定します。契約で定める所定労働時間は、その企業の通常の労働者と同等であることが必要です。給与の総額だけで判断せず、日本人より長く働いてようやく同額になる条件でないか照合します。
「特定技能外国人の報酬に関する説明書」(参考様式第1‑4号)には、比較対象と算定根拠を記載します。人事は業務・経験・技能の比較資料と、給与の決め方を示す賃金規程をそろえます。一定の基準を満たす機関は提出を省略できますが、報酬の基準は変わりません。比較方法と手当の扱いは、外国人ドライバーの給与設定にまとめています。
本人が一時帰国を希望した場合は、必要な有給休暇を取得させる内容の契約にします。社内の運用として、人事が帰国の希望日程を聞き取り、休暇の取得を支える窓口を決めておきます。
契約終了後の帰国旅費を本人が負担できない場合は、企業が負担します。企業には、円滑に出国できるよう必要な措置を講じることも求められます。一時帰国の航空券代と混同せず、契約終了後の帰国に関する条項として記載します。
給与から費用を差し引くことを控除といいます。社宅費などを控除する場合は、雇用条件書に名目と額を明記します。本人に負担させる額は、実費に相当するなど適正な額とし、住居の内容と費用を説明して合意を得ます。借上げ社宅の負担額の考え方は、外国人ドライバーの社宅手配で整理しています。
社宅費、食費、光熱費は分けて扱い、住居の契約書や請求書と突き合わせます。家賃が未確定なら、本人負担額の算定根拠を確かめてから契約条件を固めます。法律で義務付けられる支援の実施費用を、本人負担にはできません。
給与から社宅費を控除するには、労働基準法第24条に基づく書面の労使協定も必要です。労使協定は、会社と労働者の過半数で組織する労働組合、または過半数代表者との取り決めです。雇用条件書への署名だけで控除を始めず、給与計算の担当者が協定の対象費目を照合します。
退職を防ぐための保証金の徴収や、契約違反時の違約金を定める契約は認められません。一定期間の勤務を条件に免許費用の返済を免除する契約や、退職時に残額を一括返済させる契約も、入管の基準に抵触するおそれがあります。
確認の対象は雇用契約書だけではありません。人事は誓約書や免許費用の貸付契約にも同じ条件がないか確認します。本人の同意だけを根拠に、こうした返済条件を設けることは避けます。詳しい負担設計は、免許取得費用の会社負担と本人負担で扱っています。
雇用条件書と、採用に至った経緯を示す「雇用の経緯に係る説明書」は、本人が十分に理解できる言語で作成します。本人が内容を十分に理解した上で署名することが必要です。
上の3つの手順は、理解を確かめるための社内運用例です。説明日、使用言語、質問と回答を記録し、署名済みの書類と一緒に保管します。採用から申請までの工程は、外国人ドライバー採用の流れで確認できます。
人事は雇用条件書を軸に、給与の根拠資料、休暇規程、本人負担の費用明細をそろえます。署名前の照合では、次の点を確認します。
契約準備では、翻訳、帰国費用、業務の記載範囲を確認します。書類の形式と費用負担の条件は分けて判断する必要があります。
雇用条件書と雇用の経緯に係る説明書は、本人が十分に理解できる言語で作成する必要があります。日本語を十分に理解できない本人への口頭説明だけでは、この書類作成の要件を満たしません。
ここで扱う基準は、契約終了後の帰国旅費を本人が負担できない場合の企業負担です。一時帰国の旅費まで一律に企業負担とする規定とは異なります。
採用する業務区分と実際の担当内容が分かるよう記載します。トラックなら運行と荷物の積み下ろしなど、予定する仕事を具体化し、雇入れ直後の業務と変更の範囲を示します。