
育成就労は、2027年4月1日に始まる新しい制度です。原則3年間働きながら、一定の技能を持つ外国人向けの在留資格「特定技能1号」への移行を目指します。開始までの日程と試験の要件に続けて、転籍の条件と送出費用の本人負担(月給2か月分が上限)を整理します。
運送会社が最初に分けるべきなのは、倉庫作業と運転業務です。育成就労の17分野には物流倉庫が含まれますが、自動車運送業と航空の設定はありません。自動車運送業への追加は未定です。運転業務には特定技能1号の制度がすでにあり、育成就労の開始を待つ必要はありません。以下は2026年9月時点の公表資料に基づきます。
制度の開始は2027年4月ですが、許可・認定の申請受付は2026年から始まっています。企業は予定する仕事を対象分野と照合し、育成内容と受け入れ体制を具体化します。
日付 | 制度上の動き | 企業が押さえる点 |
|---|---|---|
2024年6月21日 | 根拠となる令和6年法律第60号が公布されました。 | 公布日と実際の受け入れ開始日は異なります。 |
2026年4月15日 | 監理支援機関の許可申請の受付が始まりました。 | 依頼する機関の許可状況を確認します。 |
2026年9月1日 | 育成就労計画の認定申請の受付が始まりました。 | 企業は本人ごとの育成内容を計画にまとめます。 |
2027年4月1日 | 制度が施行され、受け入れが可能になります。 | 個別の入社日は、企業が必要な認定・在留手続きを踏まえて決めます。 |
監理支援機関は、許可を受けて企業の指導や外国人の支援・保護を行う機関です。この機関の支援を受ける「監理型」で採用する場合、人事は許可状況と取り扱う分野を確認します。許可申請の受付開始は、各機関が許可を取得済みという意味ではありません。
育成就労計画は、誰にどの業務を通じて技能を身につけてもらうかを定め、認定を受ける計画です。申請前に、企業は担当業務と教育担当者を決め、日本語講習と試験までの日程を整理します。
対象17分野は2026年1月23日の閣議決定で定められ、運送会社がまず確認するのは物流倉庫です。17分野の全体は、介護、ビルクリーニング、リネンサプライ、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、宿泊、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業、資源循環です。
倉庫も運営する運送会社は、「入出庫・保管などの倉庫作業」と「配送の運転業務」を求人の段階で分けます。企業の登録・許可などの条件は、物流倉庫分野の受け入れ準備で確認できます。運転業務は、特定技能ドライバーの受け入れ要件に沿って検討します。
在留・就労は原則3年です。特定技能1号への移行に必要な技能・日本語の試験に不合格となった場合は、最長1年の範囲で在留の継続が認められる方針です。原則3年間の仕事を通じて、人材を育成・確保することが制度の目的です。特定技能1号への移行には、技能試験と日本語試験の両方に合格する必要があります。技能は、分野に応じて技能検定3級相当の試験や特定技能1号評価試験で確認します。日本語はA2相当以上が要件です。
A1・A2は、日本語で何ができるかを示す「日本語教育の参照枠」の水準です。就労開始前には、A1相当以上の試験に合格するか、認定日本語教育機関の「就労」課程でA1相当の講習を100時間以上受けることが基本です。分野によって、より高い水準が設定される場合があります。
入国日と就労開始日は分けて管理します。試験に未合格の人を受け入れる場合、人事は講習先、受講時間、修了予定日を確認してから勤務開始の予定を組みます。当分の間は、登録日本語教員による一定の要件を満たす講習も認められます。
育成期間中には、A2相当の講習を100時間以上受ける機会も企業が用意します。A2相当の試験に事前に合格している人には、改めて受講させる必要はありません。就労開始前の講習だけで、3年間の日本語教育が完了するとは扱わないようにします。
物流倉庫では、開始後1年以内に物流倉庫分野育成就労評価試験(初級)と日本語A1相当以上の試験に合格することが目標です。終了までには物流倉庫分野特定技能1号評価試験の合格と、日本語A2.2相当以上が求められます。評価試験は、その分野の仕事に必要な技能を確かめる試験です。
日本語試験の一つが、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT‑Basic)です。特定技能1号への移行に使う場合、JFT‑BasicではA2.2(A2)の判定、つまり総合得点200点以上が必要です。A2.1とA2.2はA2段階をさらに分けた水準で、A2.2の方が高い水準です。人事は本人の判定結果通知書で確認します。
教育計画には、本人が受験する試験名と、企業が用意する講習の時期を別々に記載します。3年間在籍しただけで特定技能1号に移れるわけではありません。合格結果の確認と在留資格の変更手続きまで含めて、継続雇用の日程を組む必要があります。
本人の希望で働く企業を変える「転籍」は、一定の条件の下で認められます。海外の候補者を日本側へ取り次ぐ送出機関の費用にも本人負担の上限があり、教育計画と合わせて募集前に整理します。
本人意向による転籍の制限期間は分野ごとに定まり、物流倉庫では1年です。期間の経過だけで転籍できるわけではなく、技能・日本語の水準と転籍先の要件も満たす必要があります。転籍は、制度で定める仕事のまとまりである「業務区分」が同じ場合に限られます。
物流倉庫の本人意向の転籍には、初級の評価試験合格と日本語A2.1相当以上が必要です。特定技能1号へ移る際に必要なA2.2より、一段低い水準です。暴力やハラスメントなど、やむを得ない事情による転籍は別に認められます。
会社は「3年間は同じ職場で働く」と固定して人員計画を立てず、入社時に転籍条件と相談先を本人へ伝えます。人事が面談で仕事内容や教育の進み具合を確認し、転籍の申出があれば監理支援機関と対応を整理します。
本人が送出機関に支払う費用の上限は、月給の2か月分です。基準となるのは、育成就労計画に記載した所定内賃金の月額、つまり決められた労働時間に対する賃金です。上限を超える費用は、受け入れ企業または監理支援機関が負担します。
人事は契約前に費用明細を取り寄せ、本人負担額と受け入れ側の負担額を分けて確認します。実際に本人が支払った額は領収書などで照合します。制度上必要となる日本語講習の費用も、受け入れ企業または監理支援機関が負担します。講習先と費用の負担者を確認し、教育予算へ入れます。
企業は採用前に、予定業務、3年間の教育日程、費用の負担区分を社内資料にまとめます。物流倉庫と運転業務を分けることが、制度選びの出発点です。
制度の開始日、移行要件、費用負担は、それぞれ別に判断します。社内で混同しやすい3点を整理します。
自動車運送業には特定技能1号の制度があるため、開始を待つ必要はありません。採用の日程は、外国人ドライバー採用の流れで確認できます。
自動的には移行しません。分野に応じた技能試験と日本語試験への合格に加え、在留資格の変更手続きが必要です。
本人には月給2か月分を超える費用を負担させられません。超過分は受け入れ企業または監理支援機関が負担します。見積もりの段階で、どちらが負担するかを決めておく必要があります。